エーデルワイスではこれまでに40名を超えるスタッフが海外研修制度の下、ベルギーを中心にヨーロッパ研修を重ねています。
今回、2024年4月11日(木)~23日(火)にこの研修制度を利用してベルギー・ブリュッセルとフランス・パリに行かれた早田シェフと置山シェフ。
現地で見たこと、学んだこと、日本に持ち帰りたいことなどなど、広報室杉本が色々と伺い、たくさん語っていただきました!
目次・前編
- 1.ブリュッセルとパリのスケジュール
- 2.研修内容
1.ブリュッセルとパリのスケジュール
早田シェフ(以下:早田):4月10日(水)に伊丹空港から羽田空港へ、その日の夜にシャルルドゴールに向けてフライト、翌11日(木)の朝シャルルドゴールに到着しました。
そのままTGV(高速列車)でシャルルドゴール駅からブリュッセル・ミディ駅まで移動、そこからサブロン広場にあるヴィタメール本店にバスで向かいました。日本出発後、乗り継ぎを含めて約20時間の移動でした。
到着後、オーナーにショップと研修中に宿泊する部屋を案内していただき、そのあとは自由時間ということで近くの町中を散策。12日(金)から研修で、19日(金)にまたTGVでパリに移動して、23日(火)までパリ、24日(水)の朝シャルルドゴールから羽田空港、伊丹空港へフライトでお昼前ぐらいに帰国しました。
14日(日)はお休みをいただいてブルージュに行きました。
ブルージュは「天井の無い美術館」と称されるユネスコ世界遺産登録されている街です。川沿いに中世の建物が多く残り、とても雰囲気の良い街並みが広がっていました。特に市庁舎の前の広場は観光客も多く、馬車なども通っており日本では見ることのできない光景が広がっていました
観光地ですが田舎なので、ごちゃごちゃしていなくてものすごくいいところです。
※ブルージュの街並み
あとブリュッセルではグラン・プラスもはずせない場所です。
ヴィタメール本店から徒歩圏にある世界遺産登録されている観光地ですが、初めてベルギーに行った時から感動し今回も何度も研修終わりに散歩した場所です。広場を中心に旧市庁舎やギルドハウスで囲まれており圧巻の景色でした。広場の中にも飲食店が多く軒を連ねており、夕暮れ時に建物を見ながらゆっくりと食事をするのがとても幸せでした。
※グラン・プラス
他の日も朝から研修をして、午後に出かける、ということもしていました。
チョコレートの国ベルギーならではの「Chocolate World」というチョコレートに関する型や道具が揃うショップや、「バリーカレボー アカデミー&ファクトリー」にも行きました。
※Chocolate World
※Chocolate Worldの店内
Chocolate Worldで購入した型は2025年のバレンタインチョコレートの型として実際に使用しています。
バリーカレボーは世界最大のチョコレートメーカーで、ファクトリーはとても大きな3つの工場から成り、1つ目の工場はカカオ豆の保管と選別、2つ目の工場がロースト、混合、コンチング(※)まで、3つ目の工場でテンパリングとパッキングを行っていました。各工場はタンクローリーで移動しており、1日1000tのチョコレートを生産していました。ほとんどの工程がオートメーション化させており、人は少なかったです。
アカデミーはファクトリーに併設されたデモンストレーション等を行う施設です。カレボーアカデミーシェフのフランシスコ・モレイラ氏にカレボーとカカオバリーのチョコレートについて説明を受けました。また、今後のカカオ相場等についても意見交換することが出来ました。
(※)コンチング:「コンチェ」という撹拌機をつかってチョコレートをさらに滑らかにする作業
※バリーカレボー アカデミー&ファクトリー
2.研修内容
早田:実際研修した期間は4月11日(木)から18日(木)です。今回は少しスケジュールがタイトで1週間ぐらいの研修でした。時間は基本的には7時から15時ですが、日によっては6時からの日もあったり、17時まで試作をした日もありました。
その期間、具体的にどんなことをされていたのでしょうか。
※早田シェフ(左)と置山シェフ(右)
早田:今回、私はチョコレートメインで、置山さんはガトーに入りました。
本国のヴィタメールは、実は今、良くも悪くも伝統が強かった展開から、新しさを取り込んでいくよう変化をしている最中で、シェフメンバーもがらっと変わったのです。ですので、今回は研修をさせていただくというよりはむしろ技術交流の側面が強かったかなと思います。1週間しかない中で、できることというのは限られていたのですが、ヴィタメール・ジャポンで作っているチョコレートを何点かベルギー向けに変更して提案したり、ミスが多く問題がある工程などに対して、改善案を出したり・・・
置山シェフ(以下:置山):ガトーでは、本国と作っているアイテムに違いはありますが、作る工程は一緒なんです。朝一番にお店のショーケースに並べるケーキをデコレーションして、それが終われば次の日の仕込みをしていくという流れです。僕のほうではその工程を一緒にさせていただきました。
やり方も若干日本と異なる部分もあるのですが、それはどちらが良いか悪いかとかではなくて、考え方がそもそも違うので、あくまでも「僕たちはこのやり方でやっています」ということを話しながら技術交流を図りました。
コミュニケーションはどうやって取っていたのですか?
置山:基本は英語なのですが、実は英語が得意なわけではないので、知っている単語を並べながら、翻訳機を使いながら(笑)
早田:やっていることは日本での仕事と大きく変わらなくて、日本の原材料名もフランス語を使ったりしているので、見れば相手が何をやっているかとかわかりますし、こうした方がいいよっていうのも伝えられます。例えば質問だったら、メモで書いたりして、現場内で難しくて意思疎通が取れない、ということはありませんでした。
置山:全部聞き取れなくてもなんとなく言っていることは理解できますし、見ていたらわかる。
以前と今回で違いはありましたか? ※早田シェフは3回目、置山シェフは今回が初めて
早田:メンバーが大きく変わったこともあり、やはり空気感はとても変わっていました。その中で覚えている方は覚えてくださっていて、はじめましての方が多かったのですが、以前から交流があるので、すごく優しくしていただきました。
実際ベルギーと日本では大きな差はないとのことでしたが、日本に取り込んだらもっと良くなるな、ということってありましたか?
置山:ケーキ一つでも、やはりそれも考え方の違いなのですが、日本では商品の形崩れについて、我々もお客さまもとても気にされますが、海外ではそのところ多少なら気にされてなくて、なのでテクスチャーがもっとソフトで、味もよりフレッシュな商品を作ることができる。日本ほど保形性というところを気にしすぎないので、そういう意味では味の幅が広がっていいのかなと思います。
また、向こうの方は意見をはっきりという気質があるので、新しい商品を作る時でも、みんなで話し合って・・・。そういうところは遠慮しがちな日本にはない空気感があってすごくいいなと思いました。
日本は厳しすぎますか?
置山:どっちが良い悪いではないです。もちろんどちらも見た目については厳しい。ただ、日本人ならではの仕上がりの繊細さを求める気質はあるかなと思います。
気質の面で言うと日本は、新しいことに対しての言いにくさがあります。それは日本人独特の考え方で、海外ではむしろはっきりと言う方がいいとされる。言われた側も何か変に捉えることではなく、「よりいいものにしていこう」というディスカッションなので・・・。日本でももう少しそういう空気になっていけたらいいのかなと思いました。
早田:上下関係とかあまり気にならない。
ケーキの面で言うと、日本よりももっと時間に厳しいですね。
時間に厳しいというのは?
早田:仕事とプライベートの時間に関する考え方がドライではっきりしている。決められた時間の中での生産効率性が求められることから、冷凍技術が発達していると思いますし、大きくシートで仕込むとか。逆にお店によっての考え方の違いも大きいです。足し算よりも引き算が大きくて、シンプルに引き算で物を減らしていく。
あと海外の方が進んでいるなと感じたのがSDGsではないですけど、自然なものとか天然着色料についての考え方ですね。
それは具体的に?
早田:BIO(※)の観点では、トレンドとして日本よりも進んでいるなという印象で、人工の材料ではなく、天然のものを使っていることが多いです。
日本で日持ちを良くしたりですとか、さっきの保形性にもつながるところもあるのですが、向こうって実は食べる際にカビが生えていることもあったりするんです。でも、購入した時に何も問題がなかったら、そのあとの崩れや痛みなどは、買う側の自己責任という考えが強いんです。そういう意味では、日本に比べると安心感は低いかもしれないですが、その縛りが少ないからこそ、人口のものをどんどん減らしていって、フレッシュな味わいや色になどにどんどんトライできるのかなと思います。
(※)フランス語の「biologique(ビオロジック)」で、日本では「オーガニック」「有機」を意味する。化学肥料や農薬を使用せず、遺伝子組み換え技術を使用しないなどの生産要件を満たした有機農産物や、原料の95%以上に有機農産物が使われた加工食品を指す。
置山:スーパーでもBIOにこだわったスーパーがあったりします。
ベルギーとフランスだとBIOの意識レベルみたいなのってどっちが高いとかあるのでしょうか?
早田:フランスの方がやはりちょっと・・
進んでいる?
早田:進んでいるというのが正解なのか、というのはあるのですが。
置山:見て回った店舗数、全体数が違うからはっきりとは言えないけども、感覚としてはフランスかな。
BIOって日本は全然浸透していない印象です。
早田:そうですね、もう少し関心を持っていくべきなのかも。
日本は結構保守的な考えなのでなんでもかんでもBIOに全振りしてしまう必要は無いのではないかと個人的には思うのですが、中にはそういうものも取り入れていいかなと思います。
置山:取り組めるところから少しずつっていうのがいいのかなって。
個人店とかだと自分の考えで結構やってしまおう、でできそうな感じがするのですが、エーデルワイスのような会社になると実現できそうなのですか?
早田:BIOに限らず、例えばアレルギー源を減らしていこうってなったときに、製造拠点が一緒なので、コンタミ(※)のリスク自体除去できない。それをするには施設が新しく必要だったりするので、なかなかハードルは高いですね。後はその打ち出し方として、沢山の商品群がある中に1個だけBIOの商品を出したとしても、意識しているお客様って、そもそもBIO専門店に行かれたりしますので・・・。
ただもう少し市場が育っていくにつれて、どのようにすれば実現できるのか、考えていくべき部分ではあるかと思います。
(※)コンタミネーション:不純物が製品に混入すること
置山:昔エーデルワイスでもBIOじゃないのですが、アンテノール・ボンサンテ(※)という「ヘルシー&ナチュラル」をテーマにしたショップがありました。
それこそ17年前、僕らが入社したぐらいに少しありましたね。その時は逆に早すぎたのかもしれないけど、今からならやっていけるのかも。いきなり数字につながるものではないのですが。
(※)2005年から2009年に展開
早田:いろんな業者さんに聞いていても、流行っているのでよく聞くのですが、それが数字に直結しているわけではなく、その企業の取り組みとしてやっているところが大きい。そういう意味では取り組んでいくのはありかなと思います。
▶後半に続きます